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1. 税務調査とは?

税務調査とは、申告した相続税の内容に間違いがないかを、税務署の職員が実際に話をしたり通帳を見たりして調査をすることです。

税務署はどのようにして、亡くなった人(被相続人)を
把握しているのでしょうか。

税務署はどのようにして、亡くなった人(被相続人)を把握しているのでしょうか。

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相続税法58条には、「市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪に関する届出書を受理したときは、当該届出書に記載された事項を、当該届出書を受理した日の属する翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。」と規定されています。

この規定に基づいて、市町村長が税務署長に通知書(以下、「58条通知書」といいます。)を送付してきます。

このようにして、税務署は被相続人を100%に近い割合で把握できます。

2. 被相続人の把握、申告書の送付、
調査対象者の選定までの流れ

2. 被相続人の把握、申告書の送付、調査対象者の選定までの流れ

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58条通知書から死亡者を把握するのですが、実はこの58条通知書には被相続人の所有している土地明細が記載してあると聞いたことがあります。

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税務署は、蓄積してある資料情報を基に申告が必要と認められる人に申告書を送付します。税務署には、様々な資料情報が蓄積されています。例えば、「金」や「割引債」の取引情報もその一つです。

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税務署から申告案内を受け取った納税者は、申告書を作成して税務署に提出します。

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申告書を受理後、内容の検討(申告審理と言っているようです。)をします。
まず、資料情報、過去の職業、所得の申告状況等から申告が過少と認められる者を抽出し、預貯金等の取引状況の照会を行います。
次に、預貯金等の照会の回答(入出金状況、家族名義預金の状況等)から、不正が見込まれる者を調査対象に選定しているようです。
※預貯金照会は最長で過去7年間に遡るらしいです。

3. 調査に至るまでの経過

3. 調査に至るまでの経過

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事前調査

調査対象者を選定後、各種資料情報、預金取引照会回答等を更に精査して、調査項目の特定を行います。必要と認められれば、不足している預金取引の照会を行います。
預金照会の回答から、新たな取引銀行が把握されることもあるからです。
ここまでで、ほぼ調査の70%は終了していると考えられます。そして、納税者に国税通則法に基づいて調査着手の連絡を行い、日程の予約を入れ、いざ調査となります。

臨宅調査

調査の初日、被相続人について詳しく聞き取りを行います。
実は、この雑談の中から調査官はヒントを探します。
例えば、絵画が趣味であれば絵画が計上されているかどうか、ゴルフが趣味であればゴルフ会員権が計上されているかどうかなどです。具体的な聞き取り事項は次の通りです。

1 被相続人の経歴等

(1)本籍地、出身地、住所移転状況等(申告されていない不動産、取引銀行等の把握)
(2)職歴等

2 被相続人の趣味嗜好等

(1)趣味嗜好(書画骨董、貴金属等の所有状況)
(2)習性(日記帳等 → 財産の管理状況の把握)
(3)交友関係(メモ、香典帳 → 銀行取引等の把握)

3 病歴及び死亡当時の状況

(1)死亡原因 → 急死か長期間の闘病 → 相続対策の有無
(2)医療費の支払状況、支払資金等 → 申告されていない取引銀行等の把握
(3)入院時、死亡時の財産管理者 → 直前の現金出金及び相続対策の確認

4 被相続人の財産の管理運用状況

(1)相続人、経理担当者等の財産管理への関与の程度、期間等(メモ、日誌等)
(2)財産の管理運用の状況(蓄財傾向、記録等)
(3)財産の保管の状況(証書等の保管場所、貸金庫の利用、保護預り等)
(4)取引銀行、取引証券会社等(金融機関名、外交員の氏名)

5 相続人関係

(1)相続人及び家族等(続柄、年齢、職業、役職、所得の状況等)
(2)生前の財産の受贈者(受贈財産、時期等) → 家族名義の所有者の把握等

6 遺産分割協議の状況

(1)形見分け(日時、場所、参加者、配分品等)
(2)遺言書(作成時期、立会人及びその内容等)
(3)遺産分割協議の状況
A 協議成立までの状況(協議の時期、出席者、主張及びその主張内容等)
B 相続財産の把握及び確認の方法(原始記録、メモ等)

ここまで微細に聞き取りをするかは調査官(資質)によりますが、雑談が終わった後に調査に入ります。

準備調査時に把握している事項に対する端緒の把握を行います。
居宅の中を確認しながら、仏壇の中まで確認することもあります。
当然、任意調査ですから拒否することもできますが、心証が悪くなります。
やましい事がなければ堂々と見せたほうが良いと思われます。

4. 税務署から指摘の多い事項は主にこの2つ!

4. 税務署から指摘の多い事項は主にこの2つ!

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名義預金

相続税の税務調査は、主に被相続人が遺した全ての財産が申告書上網羅されているかという観点で実施されます。

その中で最も頻繁に指摘されている事項は、家族の名義預金です。

名義預金とは、被相続人が家族等の名義で開設した銀行の預金口座に自己の資金を預け入れていた場合の預金のことを言います。これは単に家族等に自己の資金を預けていただけであり、実質的には亡くなった人(被相続人)の財産となります。

名義預金についてはよく、「夫が子供に以前あげたものだ」と主張される方もいらっしゃいますが、子供の側にもらったという意識がなく、通帳や印鑑の管理が親のままであったとすると、調査官からは名義預金という指摘を受け相続財産とされてしまいます。

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手許現金

名義預金の他、手許現金に対する指摘も多くあります。

お亡くなりになると口座が凍結されてしまい、葬儀費用などが払えなくなるのでその前に、という理由から、預金をある程度引き出して手許に置いておかれる方がいらっしゃいます。その現金はやはりお亡くなりになった方の財産ですので、その現金を手許現金として相続財産に計上しなければなりません。

調査官は被相続人の預金口座の取引の中で、死亡日直前の出金をチェックしますので、多額の出金は必ず指摘を受けます。

また、死亡日直前の出金だけでなく、相当前の預金の多額の出金については、使途を追求されると思って下さい。

5. 最近の税務調査事績を解説

5. 最近の税務調査事績を解説

東海エリアの相続税の調査実績は名古屋国税局より毎年公表されております。最新のデータ(「平成30事務年度における相続税の調査の状況について」)は次のとおりです。

平成29事務年度 平成30事務年度 対前事務年度比
実地調査件数 1,895件 1,924件 101.5%
申告漏れ等の非違件数 1,636件 1,685件 103.0%
非違割合(②/①) 86.3% 87.6% ▲1.3ポイント
重加算税賦課件数 336件 326件 97.0%
重加算税賦課割合(④/②) 20.5% 19.3% ▼1.2ポイント
申告漏れ課税価格(※) 646億円 538億円 83.3%
⑥のうち重加算税賦課対象 134億円 125億円 93.3%
追徴税額 本税 155億円 86億円 55.5%
加算税 25億円 16億円 63.7%
合計 180億円 102億円 56.6%
実地調査
1件あたり
申告漏れ徴税価格
(⑥/①)(※)
3,409万円 2,798万円 82.1%
追徴税額
(⑩/①)
950万円 530 万円 55.8%

これによると、税務調査を受けた方のうち8割5分以上が申告漏れの指摘を受け、そのうちの約20%が重加算税(財産を隠ぺいまたは事実を仮装した場合に課される附帯税)の対象となっています。

また、申告漏れを指摘された相続財産の金額の内訳は、次のとおりとなっています。

  • 現金・預貯金等 約195億円
  • 土地 約89億円
  • 有価証券 約39億円

ここから、実際に調査で指摘を受けるのは現預金が圧倒的に多いことが分かります。これは先に述べたいわゆる「名義預金」や「手許現金」などの申告漏れが多い結果と想定されます。

6. 最近の贈与税の調査を解説

6. 最近の贈与税の調査を解説

ところで、贈与税に関する調査実績も同様に公表されております。

平成29事務年度 平成30事務年度 対前事務年度比
実地調査件数 720件 835件 116.0%
申告漏れ等の非違件数 694件 811件 116.9%
申告漏れ課税価格 33億円 40億円 121.5%
追徴税額 919百万円 1,288百万円 140.1%
実地調査
1件あたり
申告漏れ徴税価格
(③/①)(※)
461万円 482万円 104.7%
追徴税額
(④/①)
128万円 154万円 120.8%

上表に示されているとおり、調査件数自体は前年に比べやや減少傾向にあります。これは、単純に調査が緩くなっていることの結果ではありません。国税庁は、税務調査を適切に実施する一方で、納税者の自発的な適正申告を促すために、実地調査以外の方法を活用しています。具体的には、次のような方法が行われます。

7. 実地調査以外の調査方法

7. 実地調査以外の調査方法

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  • お尋ねによる書面照会
  • 電話や来署依頼による調査
  • 税理士法33条の2に係る書面添付制度による意見聴取

国税庁はこれらの方法を効果的かつ効率的に活用し、自発的な適正申告を確保するための取組みを積極的に行っています。したがって、実地調査件数は減少傾向にあるものの、適正申告を確保するための取り組みは実施されています。

税務調査対応につきましては、弊法人といたしましても、実地調査の立会いだけではなく、税務署からのお尋ねや来署依頼に対し適切に対処し、納税者の皆様のご不安の払拭に努めてまいります。

8. 実際に相続税の税務調査に
入られた方のご相談事例の紹介

8. 実際に相続税の税務調査に入られた方のご相談事例の紹介

相続税の調査が入ったことをきっかけに弊法人にご相談に来られた方の事例をご紹介します。

(1) 事例のあらまし

相続関係

被相続人 父

相続人 母・長男・次男

相続財産及び分割状況

現金・預貯金……母
有価証券……次男
貸地……長男
自宅の土地・建物……母
その他……母

初めてお電話をいただいたのはご長男の方でした。税務署から税務調査の連絡が入り、お母さまが調査にお一人で立ち会われたのですが、精神的に負担がかかり夜も眠れないとの事で、ご長男の方が大変心配されておられました。

当初相続に関する手続等はお母さまが中心となって進めておられましたので、税務署から「相続税についてのお尋ね」が届いたときも相続税の申告は不要という事で、書類に必要事項を記入して提出し、相続税の申告はされていませんでした。

調査官からの主な指摘事項は以下の通りです。

(2) 調査官からの指摘事項

亡くなる直前に被相続人の預金通帳から引き出された現金が相続財産に計上されていない。

被相続人の通帳を拝見させていただくと、お亡くなりになられる前に相続人の方が入院費用やお葬式の費用の準備のため、高額な金額を引き出されている場合が多々見受けられます。引き出された現金が亡くなるまでに費消されていなければ、亡くなられた時点で現金として計上しなければいけません。お母さまには説明してご納得いただきました。

過去3年以内に被相続人の預金通帳から引出された1,000万円の使途が不明

通帳を確認させていただきましたところ、一部が相続人の方の預金通帳に入金されておりました。贈与に該当しますと、贈与税の期限後申告、相続開始前3年以内の相続人に対する贈与として相続財産に加算という事になります。贈与税の期限後申告の場合には、本税の他に延滞税及び無申告加算税の納付が必要になります。贈与に該当しなければ、預け金等として相続財産に加算という事になります。

長男及び次男名義の預金通帳の原資の負担者

相続税の税務調査において最も指摘事項が多い項目のひとつに家族名義預金があります。不正財産として重加算税の対象となる財産の内訳においても、現金・家族名義預金で大半を占めています。

(3) 解決内容・所感

平成23年度の税制改正で配偶者の税額軽減については当初申告要件が廃止されましたので、期限後申告書を提出する場合にも適用することが出来ます。したがって、事例の方の場合も、配偶者の税額軽減の適用により、追加の相続税額はそんなに心配するほどの金額ではないことを、金額をご提示して安心していただきました。

しかし、ここで注意しなければいけないのは、隠ぺい・仮装行為に基づき相続税の申告書を提出した場合、または提出しなかった場合には、配偶者の税額軽減が適用できないという事です。税務調査においては、正しい税務・法律の知識に基づき誠実な対応をすることが、結果として納税者の方も納得する結果を得られるのではないでしょうか。

上記事例のお母さまの場合も、調査官に約5時間にわたり質問を受け、ご自身が罪を犯したような気持になったとの事でした。税務調査はお一人で対応するには心細いものだと思います。是非、専門家にご相談ください。

(本コンテンツは、税理士法人名古屋総合パートナーズの顧問(アドバイザー)のセミナー講演の資料を引用する承諾を得て掲載させていただいたものです。)

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