相続税は、亡くなった方が所有していた財産(遺産)の総額が一定の水準を超える場合に課せられる税金です。同じ国税である所得税や法人税のように一定期間に稼得した所得(言わば「儲け」)に対して課されるのではなく、相続に伴う人から人への「財の移転」に対して課される税金です。
亡くなった人(被相続人)に対して税金を課すことはできませんので、相続税は遺産を引き継いだ相続人に対して課されます。また相続人でなくとも、被相続人の残した遺言書により遺産を受け取ることになった人(受遺者)も同様に相続税が課されることになります。
相続税は固定資産税や個人住民税のように、行政機関が税額を決定して一方的に課して来るものではなく、納税義務者である相続人ないし受遺者が自主的に申告書を作成して提出し、そこで算出された税額を納付することとされています(申告納税方式と言います)。
そのため、相続人ないし受遺者に相続税申告という手続きが求められます。
相続税申告書の作成方法について詳しくはこちら。
ただし、財産を受け取った相続人全てに相続税の申告納付義務が生じる訳ではありません。相続税計算の中で「基礎控除」という財産の総額から引くことができる金額が決められており、これが言わば相続税の非課税枠となっています。すなわち、遺産の総額がこの金額を上回らないのであれば、相続税申告をする必要はないということになります。
現在、基礎控除額は、3,000万円に相続人1人あたり600万円を加えた金額と定められています。例えば夫が亡くなり相続人が子供2人と妻であるケースでは、基礎控除額が4,800万円となりますので、夫の遺産総額がこの金額を超えない限り、相続税の申告書を作成し提出する必要はありません。
ただ、配偶者に対する相続税の軽減措置や小規模宅地等の評価減など、特例の適用を受ける場合には、申告することが前提となります。したがって、これらの規定を適用した結果として仮に「相続税額がゼロ」となる場合であっても、申告書の作成と提出は必要ということになります 。
相続税の計算方法について詳しくはこちら。
相続税申告書は被相続人が死亡した時の住所地を所轄する税務署に提出します。
また、相続税申告および納税の期限は、相続開始を知った日(通常は被相続人の死亡した日)の翌日から10ヶ月以内となります。
もし、この申告期限までに申告および納付ができなかった場合や、申告した遺産総額が実際より少なかった場合などは、相続税の他に加算税や延滞税を納めることになりますので注意する必要があります。
申告期限までに申告及び納付ができなかった場合のペナルティについて詳しくはこちら。
遺産の全てを把握することには時間を要します。また、相続税申告の他にも、不動産の移転登記や銀行口座の解約など、相続人が他に行わなければならないことは多くあります。10ヶ月という期間は長いようであっという間に過ぎてしまうものです。いざという時に慌てずに済むよう、相続税に関する情報の収集とその整理を早い段階から行っておくことが肝要となります。
相続税申告までの流れについて詳しくはこちら。
土地6利用単位、家屋、預貯金、有価証券、生命保険など評価額合計2億5,000万円
| 共有取得の場合 | 分割取得の場合 | ||
|---|---|---|---|
| 遺産の内訳 | 土地 | 6880万円 | 6580万円 |
| その他の土地 | 1億2,000万円 | 1億2,000万円 | |
| 預貯金 | 6,000万円 | 6,000万円 | |
| その他の財産 | 420万円 | 420万円 | |
| 遺産合計 | 2億5,300万円 | 2億5,000万円 | |
| 基礎控除額 | △4,800万円 | △4,800万円 | |
| 課税対象遺産総額 | 2億500万円 | 2億200万円 | |
| 相続税額(配偶者の税額軽減適用前) | 4,075万円 | 3,970万円 | |
☆105万円の相続税及び28万円の登録免許税を節税することができました。
| 法定相続分に従って遺産を取得した場合 | シミュレーション結果に基づいた遺産分割の実例 | ||
|---|---|---|---|
| 一次相続 | 父の遺産合計 | 2億5,000万円 | 2億5,000万円 |
| 相続税額(配偶者の税額軽減適用) | 1,630万円 | 3,573万円 | |
| 二次相続 | 母が一次相続により取得した遺産合計 | 1億2,500万円 | 2,500万円 |
| 母固有の遺産合計 | 1億5,000万円 | 1億5,000万円 | |
| 遺産合計 | 2億7,500万円 | 1億7,500万円 | |
| 基礎控除額 | 4,200万円 | 4,200万円 | |
| 課税対象遺産総額 | 2億3,300万円 | 2億3,300万円 | |
| 相続総額 | 5,920万円 | 2,590万円 | |
| 相続税の総額 | 7,550万円 | 5,090万円 |
☆2,460万円を節税することができました。
平成29年度税制改正法案ですが、証人喚問などで国会が混乱する中、今週3月27日に参議院で可決成立しました。相続税・贈与税関連では目立つ改正はありませんでしたが、国内居住要件の変更による課税の強化や事業承継税制の要件緩和など注視すべき改正事項も盛り込まれています。詳細は、平成29年度税制改正 – 相続税関連の改正点 をご参照ください。
ところで、ここ数年改正要望が出されていた株式の評価についてですが、本改正においては非上場株式の評価については一部改正が行われましたが、上場株式の評価の改正につきましては見送られました。
近年、NISAなどの優遇税制の影響もあり、株式等有価証券を保有されている方は明らかに増加しており、私どもが相続税申告業務の中でも関わるケースが増えております。
今回は、この株式の評価方法について、省庁の改正要望の内容や本年度の改正事項を含め、概要をまとめてみたいと思います。
証券取引所に上場されている株式の評価については次の価額のうち最も低い価額により評価することとされています。
過去の価額を含む4つの価額の中から最も低いもので評価されるという点では有利な方法となっているとも言えるのですが、相続税の「相続開始から10ヶ月以内」という比較的長い申告期限の間の価格変動のリスクが評価に反映されません。この点を考慮すべきという改正要望が金融庁より出されていましたが、改正には至りませんでした。不動産等に比して値動きの大きな資産であるため、早期の改正が望まれるところです。
会社経営をされている方が亡くなった場合に直面する問題がこの非上場株式の評価です。市場価格のある上場株式とは異なり、その会社自体を評価することになるので、その評価方法は単純なものではありません。
まず、非上場株式を評価するにあたり、相続ないし贈与で株式を取得した相続人ないし受贈者が、その会社について経営支配力を有する株主(同族株主)か否かにより、①原則的に会社評価を行うか、②例外的(特例的)に配当実績による評価を行うか、が決まります。
株式を取得する者が同族株主に該当する場合、当該株式の評価にあたり、最初に会社を純資産価額、従業員数および取引金額の大きさに応じて、大会社、中会社または小会社に区分します。そして、それぞれ規模に応じた評価方法が適用されます。
大会社の場合は、原則として、類似業種比準方式が採られます。これは、株式を評価する会社の類似業種の株価を基とし、評価する株式の1株あたりの配当金額、利益金額および純資産価額の3つの指標を標準値と各々比準した率を加味することにより評価計算を行う方法です。類似業種の業種目や業種目別の株価、配当金額等の標準値は国税庁から公表されています。
今回の税制改正により、上の3つの指標のうち、利益金額の株式評価計算に占める割合が5分の3から3分の1に縮小されました。会社の収益性の株価に与える影響が小さくなり、一時的な損益の増減が株価に反映されにくくなったと言えます。
一方、小会社の場合は、原則として、純資産価額方式で株式を評価します。この方式は、会社の貸借対照表上の資産および負債を財産評価基本通達に従った金額に評価替えし、その差額から法人税額等相当額を控除して算出される純資産価額を基準として株式を評価するものです。実務上、この評価替えに手間がかかります。
なお、中会社とされた場合は、上述の2つの方法を併用して株式を評価することとされています。
株式を取得する者が会社の経営に影響を及ぼさない程の少数株主となる場合、1年間に受け取る配当金額を一定の還元率で割り返して求めた金額を株式の評価額とします(配当還元方式)。この方式は会社の財務データが入手できなくても計算ができる簡便な方法です。
被相続人が会社経営を行っていた場合、多くのケースで原則的方法による非上場株式の評価を余儀なくされます。計算が一筋縄では行かないことが多く、これについては早めに税理士に相談されることをお勧めします。
賃貸中のマンション1室、空室マンション1室,山林、預貯金、有価証券など
| ご依頼人による集計 | 弊法人の計算結果 | ||
|---|---|---|---|
| 遺産の内訳 | 土地 | 435万円 | 327万円 |
| 山林 | 80万円 | 80万円 | |
| 家屋 | 340万円 | 340万円 | |
| 有価証券 | 935万円 | 935万円 | |
| その他 | 2,874万円 | 2,874万円 | |
| 遺産合計 | 4,665万円 | 4,556万円 | |
| 基礎控除額 | 4,200万円 | 4,200万円 | |
| 課税対象遺産総額 | 465万円 | 356万円 | |
| 相続税額 | 46万円 | なし | |
☆46万円の節税を行うことができました。
相続税対策として不動産への投資がよく行われています。これは一般に不動産の評価額が実際の取引価額より低く評価されるからです。この不動産を貸地・貸家とすれば更に評価額が下がり、相続税対策として有効な手段となります。(詳しくは 不動産を活かす!節税対策 をご参照ください。)
このような対策を行った方がお亡くなりになった場合、相続財産の中に貸アパートや貸駐車場のような収入を伴う不動産が含まれることになります。
この家賃収入や駐車場収入は不動産所得として所得税の対象となるのですが、誰がどのように申告することになるのでしょうか。
今回はこの問題を整理していきます。
まず、被相続人がお亡くなりになる日までの収入ですが、これは被相続人の収入ですので、あくまで被相続人の所得として申告する必要があります。もちろん、お亡くなりになった方が確定申告することはできませんので、申告は相続人が代わって行います。これを準確定申告と言い、被相続人の死亡から4ヶ月以内に行う必要があります。相続税の申告期限(死亡から10ヶ月以内)より随分早いのでご注意ください。
では、被相続人が亡くなった後の収入についての申告ですが、これは相続人の収入として自身の確定申告に含めて申告します。これまで確定申告など無縁であった方も、このために申告する必要が生じてきます。
相続人が一人である場合は分かりやすいのですが、相続人が複数いる場合はどうなるのでしょう。
もし被相続人が遺言書を残されていて、賃貸不動産を引き継ぐ者が指定されていれば、その方が確定申告をすることになります。遺言書がないケースでも相続人間で早々のうちに遺産分割協議が整い、特定の相続人が引き継ぐことになった場合も結果は同様です。
問題となるのは、被相続人が遺言書を残さず、かつ遺産分割協議が確定申告の期限までに整わなかった場合です。この場合、相続財産は相続人全員で共有している状態となっているため、民法の法定相続分に従った割合で不動産収入を按分した上で、相続人全員が申告をすることになります。
父が亡くなり、母と息子が相続人となる場合、不動産収入は2分の1ずつ各々が申告し所得税を納付することになります。
では、確定申告書を提出した後に遺産分割協議が整い、先の例で言うと、母が全ての賃貸不動産を相続することになった場合、過去の所得税の負担はどのようになるのでしょう。遺産分割協議の効力の発生は相続の開始時点に遡るという原則に従うと、息子は納付する必要のない所得税を負担したので還付してもらえるようにも思えます。
この不動産収入の帰属については最高裁で判断がなされており、家賃等の賃料債権は「遺産とは別個の財産」であり、「分割単独債権として確定的取得する」とされ、「後の遺産分割の影響を受けない」とされています(平成17年9月8日最高裁判決)。すなわち、所得税申告後の遺産分割において法定相続分と異なる分割割合で賃貸不動産を分けることになっても、過去の所得税申告を修正する必要はないということです。遺産分割協議後に発生する収入より、分割協議の結果に従った所得税申告(全て母の所得として申告)をすればよいということになります。
最後に、この相続に起因する確定申告に関して1点注意していただきたいこととして、青色申告の申請があります。
損失の繰越しや特別控除などのメリットを得るため、多くの事業所得者や不動産所得者がこの青色申告を申請し行っていますが、この「青色申告できる」という立場は相続されません。すなわち、賃貸不動産などを相続した相続人は改めて自己の名で青色申告の承認申請をしなければなりません。
この相続人が青色申告を申請する期限は、被相続人の亡くなった日を基準に次のように定められています。
この期限を過ぎてしまうと、少なくとも被相続人がお亡くなりになった年の確定申告は白色申告となってしまいますので、どうかお気を付けください。
自宅である土地と家屋、預貯金、上場株式など評価額合計2億8,800万円。
| 法定相続分に従った相続税計算 | 相続税総額が最少となる遺産分割方法に従った相続税計算 | |
|---|---|---|
| 父の遺産合計 | 28,800万円 | 28,800万円 |
| 母の取得財産 | 14,400万円 | 4,600万円 |
| 一次相続での相続税 | 2,313万円 | 3,920万円 |
| 母の固有財産 | 8,000万円 | 8,000万円 |
| 一次相続での母の取得財産 | 14,400万円 | 4,600万円 |
| 二次相続での相続税額 | 3,630万円 | 1,248万円 |
| 一次・二次相続の相続税総額 | 5,943万円 | 5,168万円 |
☆775万円の節税を行うことができました。
先代から相続されていた名古屋市内の土地(1200㎡、路線価185,000円、雑種地)、自宅家屋、預貯金、上場株式など
| ご依頼人による集計 | 弊法人の計算結果 | ||
|---|---|---|---|
| 遺産の内訳 | 土地 | 2億2,200万円 | 1億1,988万円 |
| 家屋 | 120万円 | 120万円 | |
| 預貯金 | 3,800万円 | 3,800万円 | |
| 上場株式 | 500万円 | 500万円 | |
| その他 | 30万円 | 30万円 | |
| 遺産合計 | 26,650万円 | 16,438万円 | |
| 基礎控除額 | (4,800万円) | (4,800万円) | |
| 課税対象遺産総額 | 21,850万円 | 11,638万円 | |
| 相続税額 | 4,455万円 | 1,727万円 | |
☆2,728万円の節税を行うことができました。
自宅土地(300m2、路線価90,000円)、家屋、預貯金、生命保険(300万円)など
| ご依頼人による集計 | 弊法人の計算結果 | ||
|---|---|---|---|
| 遺産の内訳 | 土地 | 2,700万円 | 540万円 |
| 家屋 | 250万円 | 250万円 | |
| 預貯金 | 2,500万円 | 2,500万円 | |
| 生命保険金 | 300万円 | – | |
| その他 | 150万円 | 150万円 | |
| 遺産合計 | 5,900万円 | 3,440万円 | |
| 基礎控除額 | (3,600万円) | (3,600万円) | |
| 課税対象遺産総額 | 2,300万円 | – | |
| 相続税額 | 354万円 | なし | |
☆354万円の節税を行うことができました。
相続により取得した不動産や株式を保有せずに売却する場合、忘れてはならないものが譲渡所得税です。
譲渡所得税は、自己の所有物を他人に譲渡した際の売却代金がその物を取得した際に要した費用(取得費)を上回る場合に課される税金で、言わば値上り益への課税です。これは財産を相続により取得した方にも課されます。
今回は相続財産を売却する場合の留意点や有利となる特例等についてご説明したいと思います。
譲渡所得税は売却代金から取得費と譲渡の際に要した費用(仲介手数料や印紙税など)を差引いた額を所得金額として計算し課税されます。
この場合の取得費は通常、所有者が購入した際の支出額となるのですが、相続のように何も対価を支払わずに取得した場合はどうなるのでしょう?
相続により財産を取得した場合は、その財産を元々持っていた人、すなわち亡くなった人が過去取得した際に支出した費用が相続財産にかかる取得費となります。言うなれば相続人は所有者としての立場も相続しているということです(これは贈与により財産を取得したケースにも当てはまります)。
ところで相続財産がかなり以前に取得された土地などの場合、取得費がいくらなのか調べようがないケースもあります。このように取得費が不明の場合は売却代金の5%を取得費とすることができます。逆に言えば売却代金の95%は所得として課税されるということです。
先祖伝来の土地などの場合はかえって有利な場合もあるかと思いますが、多くのケースは実際より所得が大きく計算されてしまうことになるでしょう。売買契約書など、当初の取得費を示す書類は子孫のために大切に保管することが肝要となります。
相続人が相続財産を一定の期間内に譲渡する場合、納付した相続税の一定額を取得費に加える(すなわち譲渡所得から控除する)ことができるという制度があります。これを取得費加算といいます。
この制度を利用できる相続人は実際に相続税が課税された人に限られ、適用できる期間も、相続税申告の申告期限から3年以内の譲渡に限られています。また、取得費に加算できる相続税額は納付した税額全額という訳ではなく、その譲渡する資産の価額に相当する分に限られます(譲渡する相続人が「相続した財産の総額」に占める「譲渡する資産の価額」の割合で、納付した相続税額を按分します)。
不動産でも株式でも、保有する意思がない相続財産は早めに処分することが節税につながります。
会社を経営していた親が亡くなり、その子がその会社の株式を相続財産として取得することがあります。この場合、特に会社の財政状態が良い、すなわち株式の評価額が高いケースでは相続税額が高くなり、相続人の納税資金が不足するという問題が生じてきます。
これに対処するため、相続人が株式を発行している会社自体に株式を譲渡し、納税資金を確保するということがよく行われます。
ただしこの場合、会社にとっては自己株式の取得という少々特殊な状況となります。すなわち、通常、株式の対価のうち、資本金額(出資額)に対応する分を超える部分は配当金とみなされ、総合課税(住民税と合わせて最高税率55%)の対象となり、一般に課税上不利となってしまいます。
しかし、相続人が相続財産として取得した株式を発行会社に譲渡する場合には特例が認められており、この「みなし配当」の部分が総合課税されるのではなく、一定の期間内、譲渡所得として20%の定率課税となります。
この一定の期間は上述の取得費加算と同様、相続税申告の申告期限から3年以内の譲渡となります。
この特例を適用するにあたり気を付けていただきたいことは、20%の定率課税が認められる相続人は、相続税を納付している者に限定されていることです。
すなわち、相続税の配偶者軽減を利用して相続税を納付しないこととなった配偶者が相続で取得した株式を発行会社に譲渡してもこの特例は適用されず、みなし配当として総合課税の対象とされてしまいます。
上述のとおり取得費加算も相続税を納付する相続人に限定して認められている制度なので、このような非上場株式を取得する相続人を誰にするのか、適切に判断しておく必要があります。
*なお、本年度の税制改正により、相続財産についてもマイホーム特例(3,000万円の所得控除)が適用できることとなりました。詳しくは 相続財産に対するマイホーム特例の適用 - 平成28年度税制改正 をご参照ください。
税務調査とは、申告した相続税の内容に間違いがないかを、税務署の職員が実際に話をしたり通帳を見たりして調査をすることです。
相続税法58条には、「市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪に関する届出書を受理したときは、当該届出書に記載された事項を、当該届出書を受理した日の属する翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。」と規定されています。
この規定に基づいて、市町村長が税務署長に通知書(以下、「58条通知書」といいます。)を送付してきます。
このようにして、税務署は被相続人を100%に近い割合で把握できます。
58条通知書から死亡者を把握するのですが、実はこの58条通知書には被相続人の所有している土地明細が記載してあると聞いたことがあります。
↓
税務署は、蓄積してある資料情報を基に申告が必要と認められる人に申告書を送付します。税務署には、様々な資料情報が蓄積されています。例えば、「金」や「割引債」の取引情報もその一つです。
↓
税務署から申告案内を受け取った納税者は、申告書を作成して税務署に提出します。
↓
申告書を受理後、内容の検討(申告審理と言っているようです。)をします。
まず、資料情報、過去の職業、所得の申告状況等から申告が過少と認められる者を抽出し、預貯金等の取引状況の照会を行います。
次に、預貯金等の照会の回答(入出金状況、家族名義預金の状況等)から、不正が見込まれる者を調査対象に選定しているようです。
※預貯金照会は最長で過去7年間に遡るらしいです。
調査対象者を選定後、各種資料情報、預金取引照会回答等を更に精査して、調査項目の特定を行います。必要と認められれば、不足している預金取引の照会を行います。
預金照会の回答から、新たな取引銀行が把握されることもあるからです。
ここまでで、ほぼ調査の70%は終了していると考えられます。そして、納税者に国税通則法に基づいて調査着手の連絡を行い、日程の予約を入れ、いざ調査となります。
調査の初日、被相続人について詳しく聞き取りを行います。
実は、この雑談の中から調査官はヒントを探します。
例えば、絵画が趣味であれば絵画が計上されているかどうか、ゴルフが趣味であればゴルフ会員権が計上されているかどうかなどです。具体的な聞き取り事項は次の通りです。
(1)本籍地、出身地、住所移転状況等(申告されていない不動産、取引銀行等の把握)
(2)職歴等
(1)趣味嗜好(書画骨董、貴金属等の所有状況)
(2)習性(日記帳等 → 財産の管理状況の把握)
(3)交友関係(メモ、香典帳 → 銀行取引等の把握)
(1)死亡原因 → 急死か長期間の闘病 → 相続対策の有無
(2)医療費の支払状況、支払資金等 → 申告されていない取引銀行等の把握
(3)入院時、死亡時の財産管理者 → 直前の現金出金及び相続対策の確認
(1)相続人、経理担当者等の財産管理への関与の程度、期間等(メモ、日誌等)
(2)財産の管理運用の状況(蓄財傾向、記録等)
(3)財産の保管の状況(証書等の保管場所、貸金庫の利用、保護預り等)
(4)取引銀行、取引証券会社等(金融機関名、外交員の氏名)
(1)相続人及び家族等(続柄、年齢、職業、役職、所得の状況等)
(2)生前の財産の受贈者(受贈財産、時期等) → 家族名義の所有者の把握等
(1)形見分け(日時、場所、参加者、配分品等)
(2)遺言書(作成時期、立会人及びその内容等)
(3)遺産分割協議の状況
A 協議成立までの状況(協議の時期、出席者、主張及びその主張内容等)
B 相続財産の把握及び確認の方法(原始記録、メモ等)
ここまで微細に聞き取りをするかは調査官(資質)によりますが、雑談が終わった後に調査に入ります。
準備調査時に把握している事項に対する端緒の把握を行います。
居宅の中を確認しながら、仏壇の中まで確認することもあります。
当然、任意調査ですから拒否することもできますが、心証が悪くなります。
やましい事がなければ堂々と見せたほうが良いと思われます。
名義預金
相続税の税務調査は、主に被相続人が遺した全ての財産が申告書上網羅されているかという観点で実施されます。
その中で最も頻繁に指摘されている事項は、家族の名義預金です。
名義預金とは、被相続人が家族等の名義で開設した銀行の預金口座に自己の資金を預け入れていた場合の預金のことを言います。これは単に家族等に自己の資金を預けていただけであり、実質的には亡くなった人(被相続人)の財産となります。
名義預金についてはよく、「夫が子供に以前あげたものだ」と主張される方もいらっしゃいますが、子供の側にもらったという意識がなく、通帳や印鑑の管理が親のままであったとすると、調査官からは名義預金という指摘を受け相続財産とされてしまいます。
手許現金
名義預金の他、手許現金に対する指摘も多くあります。
お亡くなりになると口座が凍結されてしまい、葬儀費用などが払えなくなるのでその前に、という理由から、預金をある程度引き出して手許に置いておかれる方がいらっしゃいます。その現金はやはりお亡くなりになった方の財産ですので、その現金を手許現金として相続財産に計上しなければなりません。
調査官は被相続人の預金口座の取引の中で、死亡日直前の出金をチェックしますので、多額の出金は必ず指摘を受けます。
また、死亡日直前の出金だけでなく、相当前の預金の多額の出金については、使途を追求されると思って下さい。
東海エリアの相続税の調査実績は名古屋国税局より毎年公表されております。最新のデータ(「平成30事務年度における相続税の調査の状況について」)は次のとおりです。
| 平成29事務年度 | 平成30事務年度 | 対前事務年度比 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| ① | 実地調査件数 | 1,895件 | 1,924件 | 101.5% | |
| ② | 申告漏れ等の非違件数 | 1,636件 | 1,685件 | 103.0% | |
| ③ | 非違割合(②/①) | 86.3% | 87.6% | ▲1.3ポイント | |
| ④ | 重加算税賦課件数 | 336件 | 326件 | 97.0% | |
| ⑤ | 重加算税賦課割合(④/②) | 20.5% | 19.3% | ▼1.2ポイント | |
| ⑥ | 申告漏れ課税価格(※) | 646億円 | 538億円 | 83.3% | |
| ⑦ | ⑥のうち重加算税賦課対象 | 134億円 | 125億円 | 93.3% | |
| ⑧ | 追徴税額 | 本税 | 155億円 | 86億円 | 55.5% |
| ⑨ | 加算税 | 25億円 | 16億円 | 63.7% | |
| ⑩ | 合計 | 180億円 | 102億円 | 56.6% | |
| ⑪ | 実地調査
1件あたり |
申告漏れ徴税価格
(⑥/①)(※) |
3,409万円 | 2,798万円 | 82.1% |
| ⑫ | 追徴税額
(⑩/①) |
950万円 | 530 万円 | 55.8% | |
これによると、税務調査を受けた方のうち8割5分以上が申告漏れの指摘を受け、そのうちの約20%が重加算税(財産を隠ぺいまたは事実を仮装した場合に課される附帯税)の対象となっています。
また、申告漏れを指摘された相続財産の金額の内訳は、次のとおりとなっています。
ここから、実際に調査で指摘を受けるのは現預金が圧倒的に多いことが分かります。これは先に述べたいわゆる「名義預金」や「手許現金」などの申告漏れが多い結果と想定されます。
ところで、贈与税に関する調査実績も同様に公表されております。
| 平成29事務年度 | 平成30事務年度 | 対前事務年度比 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| ① | 実地調査件数 | 720件 | 835件 | 116.0% | |
| ② | 申告漏れ等の非違件数 | 694件 | 811件 | 116.9% | |
| ③ | 申告漏れ課税価格 | 33億円 | 40億円 | 121.5% | |
| ④ | 追徴税額 | 919百万円 | 1,288百万円 | 140.1% | |
| ⑤ | 実地調査
1件あたり |
申告漏れ徴税価格
(③/①)(※) |
461万円 | 482万円 | 104.7% |
| ⑥ | 追徴税額
(④/①) |
128万円 | 154万円 | 120.8% | |
上表に示されているとおり、調査件数自体は前年に比べやや減少傾向にあります。これは、単純に調査が緩くなっていることの結果ではありません。国税庁は、税務調査を適切に実施する一方で、納税者の自発的な適正申告を促すために、実地調査以外の方法を活用しています。具体的には、次のような方法が行われます。
国税庁はこれらの方法を効果的かつ効率的に活用し、自発的な適正申告を確保するための取組みを積極的に行っています。したがって、実地調査件数は減少傾向にあるものの、適正申告を確保するための取り組みは実施されています。
税務調査対応につきましては、弊法人といたしましても、実地調査の立会いだけではなく、税務署からのお尋ねや来署依頼に対し適切に対処し、納税者の皆様のご不安の払拭に努めてまいります。
相続税の調査が入ったことをきっかけに弊法人にご相談に来られた方の事例をご紹介します。
被相続人 父
相続人 母・長男・次男
現金・預貯金……母
有価証券……次男
貸地……長男
自宅の土地・建物……母
その他……母
初めてお電話をいただいたのはご長男の方でした。税務署から税務調査の連絡が入り、お母さまが調査にお一人で立ち会われたのですが、精神的に負担がかかり夜も眠れないとの事で、ご長男の方が大変心配されておられました。
当初相続に関する手続等はお母さまが中心となって進めておられましたので、税務署から「相続税についてのお尋ね」が届いたときも相続税の申告は不要という事で、書類に必要事項を記入して提出し、相続税の申告はされていませんでした。
調査官からの主な指摘事項は以下の通りです。
被相続人の通帳を拝見させていただくと、お亡くなりになられる前に相続人の方が入院費用やお葬式の費用の準備のため、高額な金額を引き出されている場合が多々見受けられます。引き出された現金が亡くなるまでに費消されていなければ、亡くなられた時点で現金として計上しなければいけません。お母さまには説明してご納得いただきました。
通帳を確認させていただきましたところ、一部が相続人の方の預金通帳に入金されておりました。贈与に該当しますと、贈与税の期限後申告、相続開始前3年以内の相続人に対する贈与として相続財産に加算という事になります。贈与税の期限後申告の場合には、本税の他に延滞税及び無申告加算税の納付が必要になります。贈与に該当しなければ、預け金等として相続財産に加算という事になります。
相続税の税務調査において最も指摘事項が多い項目のひとつに家族名義預金があります。不正財産として重加算税の対象となる財産の内訳においても、現金・家族名義預金で大半を占めています。
平成23年度の税制改正で配偶者の税額軽減については当初申告要件が廃止されましたので、期限後申告書を提出する場合にも適用することが出来ます。したがって、事例の方の場合も、配偶者の税額軽減の適用により、追加の相続税額はそんなに心配するほどの金額ではないことを、金額をご提示して安心していただきました。
しかし、ここで注意しなければいけないのは、隠ぺい・仮装行為に基づき相続税の申告書を提出した場合、または提出しなかった場合には、配偶者の税額軽減が適用できないという事です。税務調査においては、正しい税務・法律の知識に基づき誠実な対応をすることが、結果として納税者の方も納得する結果を得られるのではないでしょうか。
上記事例のお母さまの場合も、調査官に約5時間にわたり質問を受け、ご自身が罪を犯したような気持になったとの事でした。税務調査はお一人で対応するには心細いものだと思います。是非、専門家にご相談ください。
(本コンテンツは、税理士法人名古屋総合パートナーズの顧問(アドバイザー)のセミナー講演の資料を引用する承諾を得て掲載させていただいたものです。)
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