相続税の申告は、その申告書の様式を見ても相続人全員が共同して署名押印して提出することが義務付けられているように思えますが、法律上はあくまで相続人各人がそれぞれ納税義務者であり、個々に申告することがむしろ原則とされています。
相続税法上、「申告書の提出先の税務署長が同一であるときは共同して提出することができる」と規定されている(27条5項)一方で、その附則において、「当分の間」としながらも、「申告すべき相続税に係る納税地は...被相続人の死亡の時における住所地とする」と定めているため(附則3項)、実務上は相続人が一緒に一つの申告書を連名で、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に提出することが通常となっています。
とは言っても、相続人が各々で申告書を作成すると、手間やコストが余計にかかる上、申告書に記載される遺産の内容やその評価額に違いがあると、受け取った税務署側はその検証と調整を行う必要が生じ、税務調査が実施されることにつながります。
税務調査について詳しくはこちらをご覧ください。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月と比較的期間が長いので、遺産分割がまとまらないケースなどは仕方ないにしても、相続人が離れて暮らしていることだけが理由でしたら、相続人のお一人が取りまとめ役になり作成する、あるいは税理士に依頼するなど、共同で提出できるよう事前に相続人間でお話しされることをお勧めします。
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