原則として年間110万円までの贈与には贈与税の課税はないのですが、いわゆる連年贈与と認定される場合は課税の問題が生じます。
なお、これまでは相続時精算課税制度を選択しているケースでも110万円以下の贈与に贈与税が課される場合がありましたが、令和5年度税制改正で相続時精算課税制度にも110万円の基礎控除が認められたため、これはなくなりました。
贈与税は計算上、110万円までの基礎控除が認められているため、この金額を贈与額が下回る限り、原則として贈与税は課税されません(Q3ご参照)。
しかし、毎年同時期に同じ金額を同じ人に対して継続的に渡している場合、これを一定のまとまった金銭を単に分割して支払っているとみなされ、贈与額全体を課税対象とされる可能性があります。
例えば、父が子に対し毎年100万円ずつ同じ時期に贈与していた場合、これを年100万円の贈与とされず、1,000万円を10年に渡り年100万円ずつ受け取る権利(定期金に関する権利)を最初の年に贈与したとみなされてしまうリスクが生じます。
ただ、これは1,000万円の金銭を10年に渡り年100万円ずつ渡すという意思を父が有してこれを子と約す(契約する)ことが前提となっておりますので、そのような意思で行なわれるものでない限り、課税の問題は生じないと言えます。
課税する側の誤解を避けるために、贈与日、金額などを年ごとに変え、毎年その年の贈与金額にかかる契約書を作成した上で、振込記録などを残すことをお勧めいたします。
なお、令和5年までは、相続時精算課税制度を選択している場合に、通算で2500万円以上の贈与を行っていると、110万円以下の贈与で合っても、一律20%の税率で贈与税が課されるようになっておりました。
相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から18歳以上の子又は孫に対し財産を贈与する場合において選択できる制度で、選択した場合、2,500万円までの贈与には贈与税がかからず、これを超える部分には一律20%の税率で贈与税課税が行なわれるというものです。(その後、贈与者が亡くなり相続が開始された時に、相続税計算の中にこの贈与財産の価額を戻し入れ、負担すべき納税額の精算を行うことになります。)
令和5年度の税制改正により、この相続時精算課税制度を選択した場合でも、令和6年以降の贈与については、1年につき110万円の基礎控除(非課税枠)が認められたため、この範囲であれば通算で2500万円以上の贈与を行っていたとしても20%の贈与税は課されないことになりました。
この相続時精算課税制度の中での110万円の基礎控除額の範囲内で行われた贈与は、将来贈与者が亡くなり、相続税計算が必要になった場合でも、その計算に含める必要はないという仕組みになっております。
すなわち、贈与税が課されない上に、将来の相続財産への戻し入れ計算も必要ないことになりますので、将来相続人となる子については、あえてこの相続時精算課税制度を選択することが、有効な生前対策の手段となり得ることとなりました。
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