借地権の定義は、法人税法、所得税法、相続税法により差異がありますが、相続税法の「借地権」とは、借地借家法からの借用概念によっており、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」をいいます。私どもでは、借地権の評価をする際には、必ず賃貸借契約書の確認をさせていただき、借地契約が、定期借地権・事業用定期借地権等ではないか、建物の所有を主たる目的とする契約であるか、借地権はその土地全体に及ぶものであるかどうかなどを確認させていただきます。
ではまず、個人間で土地の賃貸借契約があった場合の課税関係を整理してみたいと思います。個人地主が借地権の設定時において、権利金を授受せず、かつ、地代として最低限収受すべき地代を収受しない場合には、借地人に対して借地権を取得したとして贈与税が課税されます。この場合において、個人地主は、借地権の譲渡をしたとして譲渡所得税の課税がされると誤解される事がありますが、借地権の設定は譲渡ではないので、個人地主に対して譲渡所得税が課税されることはありません。
次に、個人地主が、借地人から貸地の返還を受けた場合の課税関係を整理します。立退料等の対価を支払っている場合は問題がないのですが、無償で貸地の返還を受ける場合は、契約書において、将来借地を無償で返還することが定められている場合及び借地上の建物が著しく老朽化したことその他これに類する事由により、借地権が消滅し、又はこれを存続することが困難であると認められる事情がある場合を除き、個人地主に対して贈与税が課税されることになります。ただし、借地の返還をする場合には、借地人が死亡したり、逆に地主が死亡したりと様々な事情がある場合が多く、これらの事情により正常価格を大幅に下回る限定価格により取引されたとしても、認められる場合もあります。
よくあるケースだと思いますが、親と子、夫と妻などの特殊関係者間で、土地を無償で貸借していた場合の課税関係はどうなるでしょうか。相続税法基本通達9-10には、無償で土地の貸与があった場合には、その利益を受けた金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合を除きその受けた利益に対して贈与税を課税することが定められています。課税上弊害がないと認められる場合・・・難しいですよね。実は、使用貸借通達の運用について、建物等の所有を目的とする土地の使用貸借による借受けがあった場合には、「課税上弊害がないと認められる場合」に該当することが定められています。したがって、使用貸借で借地権の認識のない土地を賃貸借にするときは、注意が必要となります。
昭和48年の使用貸借通達が出来る前は、個人間の使用貸借に対して贈与税が課税された時代もありました。そのため、経過措置により、過去において使用貸借につき贈与税が課税されたものは、本来課税すべきであるが課税されていないもの含めて、今現在使用貸借であっても、借地権を認められるものもありますので留意が必要となります。
借地権課税は、個人間の場合は割と理解しやすいものとなっておりますが、例えば、法人の役員が主催法人に土地を貸付ける場合など、法人が関わってくると法人税と所得税及び相続税の相互理解が必要となり複雑難解なものとなります。是非ご相談いただけましたらと思います。
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