障害のある方が納税者となる場合、税目ごとに様々な特例があります。
例えば所得税では、基礎控除(38万円)の他に障害者控除として27万円または40万円を所得金額より控除することができます。
この障害者控除の制度は相続税にもあります。相続や遺贈により財産を取得した方が障害者である場合、一定の税額控除を受けることができます。
相続税の障害者控除には適用や計算にあたり特徴的な部分が見られます。今回はこの控除の仕組みを適用要件、控除金額、控除の手順に分けてご説明したいと思います。
障害者控除の適用を受けられる方は次の要件のすべてに該当する方です。
この一般障害者および特別障害者はそれぞれ次に該当する者を言います。
一般障害者 | 特別障害者 | |
---|---|---|
指定医等の判定により知的障害者とされた者のうち、 | 重度の知的障害者とされた者以外の者 | 重度の知的障害者とされた者 |
精神障害者保健福祉手帳の障害等級が、 | 2級または3級である者 | 1級である者 |
身体障害者手帳の障害の程度が、 | 3級から6級である者 | 1級または2級である者 |
戦傷病者手帳の交付を受けている者で、恩給法での障害の程度が、 | 4項症から6項症の記載のある者他 | 特別項症から3項症の記載のある者 |
*上記のほか、介護を要する者、65歳で精神または身体に障害のある者のうち、その障害の程度が上記に準ずる者として市町村長等の認定を受けている者も適用対象となります。
障害者控除の控除額は、対象となる方の年齢が85歳に達するまでの年数に、一般障害者は10万円、特別障害者は20万円をそれぞれ乗じて計算します。
これを計算式で示すと次のようになります。
(85歳 - 相続開始時の年齢) × 10万円または20万円
計算上の1年未満の端数は1年として計算します。
例えば、45歳6ヶ月の一般障害者の方の場合、85歳に達するまでの年数は、39年6ヶ月 → 40年となり、これに10万円を乗じますので、控除額は400万円となります。
障害者控除はまず、障害者本人の相続税額から控除します。
もし、障害者控除の金額が障害者本人の相続税額を超える場合、すなわち本人が控除しきれない金額がある場合、この超過分は、同一の被相続人から相続または遺贈により財産を取得した者のうち、障害者の扶養義務者に該当する者の相続税額から控除することができることになっています。
ここでいう扶養義務者とは、①配偶者、②直系血族(父母や子)、③兄弟姉妹、④三親等内の親族で家庭裁判所の審判で扶養義務者となった者あるいは障害者と生計を一にする者、を言います。
例えば、上記の例の一般障害者の方の負担する相続税が300万円で、他の相続人に兄弟がいた場合、控除しきれなかった100万円は、その兄弟の負担する相続税額から控除できることになります。
もし、ここでいう兄弟が複数いた場合、控除しきれなかった分の按分方法については、兄弟間で協議して配分割合を決定してもよいことになっておりますが、協議が整わない場合は、それぞれの相続税額の比によって按分することとされています。
なお、障害者が2回財産を相続することになった場合(例えば父の相続の後に母の相続があった場合)であっても、障害者控除を2回目の相続でも受けることは可能です。ただしその控除限度額からは、1回目の相続の際に控除した金額(扶養義務者が控除した分を含む)は除かれることになります。
相続税の障害者控除は、この控除しきれなかった額を一定の他の相続人の税額から引くことができるという点が大変特徴的です。計算にあたり十分ご留意ください。
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