民法においては、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と規定されており、あげる人ともらう人の意思表示の合致で、贈与契約が成立することとなっておりますが、贈与の意思がなければ贈与税を課税することが出来ないのは、課税上不公平であることから、相続税法では、贈与の意思がなくても、対価を支払わないで経済的利益を受けた場合には、贈与により取得したものとみなす、いわゆる「みなし贈与」の規定があります。
以下は、相続税法上「相続若しくは遺贈又は贈与により取得したものとみなす場合」の条文ですが、今回は、第7条 低額譲渡を受けた時にみなし贈与が適用される事例についてご紹介したいと思います。
相続税法第7条では、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合には、その対価と時価との差額を贈与により取得したものとみなし、財産を譲り受けた者に贈与税を課税することが規定されています。
例えば、個人Aが時価1,000万円の土地を、個人Bに500万円で譲渡したとします。
個人A→個人B
土地:時価1,000万円←対価500万円
個人Bは、時価1,000万円の土地を500万円で取得出来た事になり、その対価500万円が著しく低い価額」に該当すれば、相続税法7条により、個人Bに差額500万円に対して贈与税が課税されます。
ここで問題となるのが、時価の判定です。
実務では、その財産の相続税評価額を基本にして判定がされるケースが多いのですが、土地、家屋等の不動産については注意が必要です。
バブル経済期において、土地の通常の取引価額と相続税評価額との開きに着目して、相続税評価額で売買することにより、譲渡損失を発生させ、所得税の負担を軽減させる取引が行われていたのを受け、平成元年に相続税評価額ではなく、通常の取引価額で判定するという通達ができました。
例えば、上の事例で、個人Aの土地の取得費が1,000万円、相続税評価額が700万円だとすると、相続税評価額で売買した場合、譲渡所得税は、(700万円-1,000万円)=-300万円で赤字となり、他の黒字の譲渡所得と通算できることになります。
この通達は、今でも残っているため、個人間で土地を売買する場合の時価の判定は、慎重に行う必要があります。
著しく低い価額の判定については、少額の差額については、許容されるものと考えられますが、所得税法59条のように、時価の2分の1を超えていれば大丈夫というわけではなく、取引の状況に応じて個々に判定されるものと考えられます。
なお、個人Aにおける課税は、低額譲渡に該当したとしても、譲渡所得課税のみとなります。
個人Aは、所得税法36条により、対価として受け取った500万円に対して譲渡所得税が課税されるという事になります。
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