昨年12月に公表された平成29年度税制改正大綱に盛り込まれ、改正が検討されていたいわゆる「広大地」にかかる評価方法について、今年10月5日、新たな財産評価基本通達が公表され、その内容が明らかになりました。
来年1月1日よりこれまでの広大地は「地積規模の大きな宅地」として新たな適用要件や計算方法に従い評価されることとなります。
本ブログでは、現時点で適用されている広大地の適用要件と評価方法が来年以降どのように変更されるのか、その影響度合いなどについてご説明したいと思います。
広大地とは、読んで字の如く「広くて大きな土地」であり、現行の通達では「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で...開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」と定義されております。
1つの宅地としては広すぎる土地を有効に活用するためには、一般に一定の開発を行い区割りされた分譲用地に転換するなど、ひと手間を加える必要があります。また、前面道路までの新たな道路の敷設といった物理的な負担(いわゆる「潰れ地」)が生ずることも想定されます。
これらのマイナス要因を考慮し、このような「広くて大きな土地」は、相続税や贈与税を計算する際の評価額が相当程度減額されることになっています。その減額幅は最大65%と大変大きなもので、これが適用できるか否かにより税額に与えるインパクトは大きく異なるものとなっています。
まず、現行の広大地評価の適用要件とその減額幅(100%-補正率)を見ていきましょう。
地積に応じて、42.5%(500m2)~65%(5,000m2以上)。
なお、奥行、不整形地等にかかる補正は考慮されない。
減額幅の大きさは大変魅力的なのですが、これらの適用要件のうち、②マンション適地ではない、④道路などの公共公益的施設用地が必要、と言った何とも不明確な要件を実務上証明することが困難で、相続税や贈与税を計算する際に適用を検討しても、最終的に断念するケースが実際多く見られます。
では、このような広大な土地は来年よりどのように変わるのでしょうか?
新通達で「広大地」は「地積規模の大きな宅地」と名を変え、その適用要件と減額幅は次のとおり変わります。
三大都市圏 - 500m2の場合…20%、1,000m2の場合…22%、5,000m2の場合…29%
それ以外 - 1,000m2の場合…20%、5,000m2の場合…28%
なお、奥行、不整形地等にかかる補正が考慮される。
現行の広大地評価と比較してみると、適用要件についてはマンション適地や潰れ地等のこれまで判定基準が曖昧であった要件が求められなくなり、容積率等客観的な基準だけとなり、適用しやすくなりました。
その一方で、不整形地等の減額補正が加味されるようになるものの、減額幅は大きく縮小されます。
このため、来年以降、この評価基準を適用できる土地の件数は増える一方で、その節税効果は全体として縮小されることが予測されます。
ここで今年中に行うべき相続税対策がひとつ提案できます。
もし現時点で現行の広大地の適用要件を満たす土地を保有しているのであれば、減額幅が大きく有利である今年のうちに子や孫に相続時精算課税制度を利用して贈与をしておく、というものです。
相続時精算課税制度とは、祖父母や父母が子や孫に財産を生前に贈与する際には一定額までは贈与税を課さず、後に相続が発生した際にこの贈与分を遺産に含めて相続税を計算し課税するという仕組みです。これにより課税の先送りという効果も得られますが、重要なのはこの制度を用いた場合の相続税計算における贈与財産の評価額があくまで贈与時の評価額となるということです。すなわち、減額幅の大きい現行の広大地評価額が将来の相続税計算に用いられることになるため、相対的に有利となるということです。
具体例を挙げますと、例えば名古屋市郊外の市街化区域に現行の広大地の要件を満たす地積1,000m2、路線価10万円(不整形地等の補正がないことを前提)の土地を有している方が相続時精算課税制度を用いて子孫に当該土地を生前贈与した場合、将来の相続税計算に用いられる当該土地の評価額は5,500万円となります。新通達適用後の評価額は7,800万円と計算されますので、2,300万円もの差が生じます。
この差は計算上地積が広くなるほど大きくなります。相続税率が累進税率となっていることを考えても、より広い土地をお持ちの方ほど生前贈与による節税効果は加速度的に大きくなると言えます。
この相続税対策を実施するためには平成29年末までに該当する土地の贈与を行う必要があります。時間的余裕のない中でのご判断になりますので、現行の広大地評価が適用される可能性のある土地をお持ちの方はお早めにご検討、ご相談をいただければと思います。
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