相続税の生前対策には様々な方法がありますが、子がマイホームを取得する際に親がその資金の一部を非課税の範囲内で子に贈与する、ということは大変ポピュラーな方策として以前からよく行われておりました。
この住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度は、その時代により非課税となる金額や適用要件が異にしており、贈与時点での制度内容を常に確認をしておく必要があります。
今回はこの非課税制度の適用要件や非課税となる金額、および今般の消費税率引上げ時期の延期に伴う影響などについてまとめてみたいと思います。
贈与を受ける人は次のすべての要件を満たす必要があります。
⑴ 原則として日本国内に住所を有すること
⑵ 贈与者の直系卑属(子や孫)であること
⑶ 贈与を受ける年の1月1日において20才以上であること
⑷ 贈与を受ける年の所得合計が2,000万円以下であること
非課税の対象となる住宅の取得には次のものが含まれます。
⑴ 受贈者が自己の居住の用に供する家屋を新築または取得する場合
⑵ 受贈者が自己の居住の用に供している家屋を増改築する場合
⑶ 家屋の敷地の用に供される土地や借地権を同時に、あるいは先行して取得する場合
受贈者が家屋を取得する場合、その家屋は次の要件を全て満たす必要があります。
⑴ 日本国内にあること
⑵ 床面積が50㎡から240㎡の範囲内にあること
⑶ 床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供されること
なお、取得する家屋が中古である場合は、取得の日以前20年以内に(一定の耐火建築物と認められる場合は25年以内に)建築されたものである等の要件を満たす必要があります。
最も重要な非課税となる金額の上限ですが、まず、一定の省エネ基準や耐震基準を満たした「良質な住宅」であるか否かによって上限額が異なっております(良質な住宅の方が非課税額が大きくなります)。また、この先の消費税率引き上げに伴う需要の変動の関係から、家屋等の取得の時期によっても非課税額に違いを設けております。
これらをまとめたものが次の表です。内容をご確認ください。
なお、今年6月に安倍首相が明言したとおり、10%への消費税率の引き上げは平成31年10月1日まで再度延期されました。これに伴い、住宅取得等資金の非課税額の変更のタイミングも次の表のとおり変更されることになっておりますのでご留意ください(本改正案は現在開かれている臨時国会に既に提出されており、今会期中に可決成立する見込みです)。
住宅用家屋の取得などに係る契約の締結期間 | 消費税の税率が10%の場合 | 左記以外の場合 | |||
---|---|---|---|---|---|
改正前 | 改正後 | 良質な住宅用家屋(*) | 左記以外の住宅用家屋 | 良質な住宅用家屋 | 左記以外の住宅用家屋 |
平成28年1月〜
平成28年9月 |
平成28年1月〜
平成31年3月 |
– | – | 1,200万円 | 700万円 |
平成28年10月〜
平成29年9月 |
平成31年4月〜
平成32年3月 |
3,000万円 | 2,500万円 | 1,200万円 | 700万円 |
平成29年10月〜
平成30年9月 |
平成32年4月〜
平成33年3月 |
1,500万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 500万円 |
平成30年10月〜
平成31年6月 |
平成33年4月〜
平成33年12月 |
1,200万円 | 700万円 | 800万円 | 300万円 |
(*) 良質な住宅用家屋とは、一定の省エネ対策、耐震・免震対策の基準を満たしている家屋をいう。
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