今月1日、国税庁より平成28年分の路線価が公表されました。報道によると、47都市中25都市で最高路線価が上昇し、また標準宅地の基準額平均は前年比0.2%上昇と、8年ぶりに上向きに転じた模様です。
この路線価は、主に市街地の路線(道路)に面する宅地の1月1日時点の1㎡あたりの評価額です。相続財産に市街地の土地が含まれている場合や市街地の土地の贈与を受けた場合、相続税または贈与税の計算で用いる当該土地の価額は原則として、その土地が接する道路の路線価にその土地の地積(面積)を乗じた金額を基準とします。もちろん、この路線価にはその土地の形や高低差などその土地固有の状況が反映されておりません。この部分は路線価を基準に算出された金額に一定の加減算することにより調整します。
路線価は毎年この時期に国税庁より公表されますが、税金の計算に用いる路線価は、相続税の場合は相続開始日(被相続人の死亡日)の属する年分、贈与税の場合は贈与を受けた日の属する年分の路線価を用います。
時々、「路線価=時価」と思っていたというお話しを伺いますが、相続税計算に用いる路線価は公示価格(国土交通省が開示する土地の正常な取引価格)の8割を目途として国税局長により定められるものです。したがって、通常のケースでは実際の取引価格より低くなります。これが、「現金を不動産に換えること自体が相続税対策となっている」と言われる所以です。
財産評価基本通達上、市街地の土地の評価は原則としてこの路線価に基づいて行うこととされているため、相続税実務では多くのケースで用いられます。ただ、この方式を用いることが絶対という訳ではないので、もし何らかの事情で取引上の実勢価格(不動産鑑定士の鑑定評価額等)が路線価を下回る場合は、こちらを採用しても差し支えないことになっています。形が極端な土地や道路に接していない土地(無道路地)などの場合にこのような状況が生じ得ます。
反対に、土地評価に路線価でなく実際の取引価格(時価)を用いることが強制される場合もあります。負担付贈与がその例です。負担付贈与とは、財産の贈与にあたり受贈者に何らかの義務を負担させることが条件となっている契約です。土地を贈与する代わりに借入金の返済を引き受けてもらうケースなどが当てはまります。この場合の贈与税算定の基礎となる土地の価額は、路線価を用いた評価額ではなく、時価で評価することとされています。
したがって受贈者に課される贈与税額は、
{(土地の時価)-(負債価額)-(基礎控除額)} × (税率)
で計算されます。(この負担付贈与に関しては、贈与者が引き受けてもらえる借入金額が当該土地の取得費用を上回る場合、贈与者に譲渡所得税が発生する可能性があり、課税関係については贈与者、受贈者ともに十分留意する必要があります。)
路線価は、主に相続税や贈与税の計算の場面で重要な役割を果たしていますが、個々の土地の価値を絶対的に定めるものではありません。税務上の制度趣旨を踏まえ、あくまで一つの目安としてお考えください。
全国の路線価は国税庁のホームページから閲覧が可能です。
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