今般の民法改正において、「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額請求権」となり、令和元年7月1日から施行されております。
この改正により、遺留分制度が、物権的な効力から金銭債権化されることになりましたが、その法的効力や税務上の取扱いはどのように変わったのでしょうか。
旧民法における遺留分減殺請求権では、減殺された遺贈又は贈与の目的財産は、原則として、受遺者又は受贈者及び遺留分権利者との共有状態になりましたが、金銭債権化されることにより、遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することが出来ることになりました。
これは、共有状態による様々なトラブルの発生が問題視されていたことによるものだと考えられます。
改正後も、当事者の合意があれば、金銭の支払いに代えて不動産を含む現物を給付することができるのですが、ここで重要なポイントがあります。
これまでは、遺贈や贈与により取得したものを含めて不動産などの現物を給付した場合課税関係は生じなかったのですが、新たに所得税基本通達33-1の6(遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて行う資産の移転)という通達が創設されました。
33-1の6
遺留分侵害額の請求の規定による遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産(当該遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求の基因となった遺贈又は贈与により取得したものを含む。)の移転があったときは、その履行をした者は、原則として、その履行があった時においてその履行により消滅した債務の額に相当する価額により当該資産を譲渡したこととなる。
簡単に言いますと、遺留分侵害額の請求をされて、遺贈により取得した不動産を渡した場合には、譲渡所得税、復興特別税、住民税がかかるというものです。
遺留分制度が金銭債権化されたことにより、遺留分権利者へ給付した資産は、代物弁済として取扱われ、譲渡所得税の課税対象となるそうです。
遺言を作成する場合には、これらの事情を踏まえて十分に検討する必要があります。
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