相続により取得した不動産や株式を保有せずに売却する場合、忘れてはならないものが譲渡所得税です。
譲渡所得税は、自己の所有物を他人に譲渡した際の売却代金がその物を取得した際に要した費用(取得費)を上回る場合に課される税金で、言わば値上り益への課税です。これは財産を相続により取得した方にも課されます。
今回は相続財産を売却する場合の留意点や有利となる特例等についてご説明したいと思います。
譲渡所得税は売却代金から取得費と譲渡の際に要した費用(仲介手数料や印紙税など)を差引いた額を所得金額として計算し課税されます。
この場合の取得費は通常、所有者が購入した際の支出額となるのですが、相続のように何も対価を支払わずに取得した場合はどうなるのでしょう?
相続により財産を取得した場合は、その財産を元々持っていた人、すなわち亡くなった人が過去取得した際に支出した費用が相続財産にかかる取得費となります。言うなれば相続人は所有者としての立場も相続しているということです(これは贈与により財産を取得したケースにも当てはまります)。
ところで相続財産がかなり以前に取得された土地などの場合、取得費がいくらなのか調べようがないケースもあります。このように取得費が不明の場合は売却代金の5%を取得費とすることができます。逆に言えば売却代金の95%は所得として課税されるということです。
先祖伝来の土地などの場合はかえって有利な場合もあるかと思いますが、多くのケースは実際より所得が大きく計算されてしまうことになるでしょう。売買契約書など、当初の取得費を示す書類は子孫のために大切に保管することが肝要となります。
相続人が相続財産を一定の期間内に譲渡する場合、納付した相続税の一定額を取得費に加える(すなわち譲渡所得から控除する)ことができるという制度があります。これを取得費加算といいます。
この制度を利用できる相続人は実際に相続税が課税された人に限られ、適用できる期間も、相続税申告の申告期限から3年以内の譲渡に限られています。また、取得費に加算できる相続税額は納付した税額全額という訳ではなく、その譲渡する資産の価額に相当する分に限られます(譲渡する相続人が「相続した財産の総額」に占める「譲渡する資産の価額」の割合で、納付した相続税額を按分します)。
不動産でも株式でも、保有する意思がない相続財産は早めに処分することが節税につながります。
会社を経営していた親が亡くなり、その子がその会社の株式を相続財産として取得することがあります。この場合、特に会社の財政状態が良い、すなわち株式の評価額が高いケースでは相続税額が高くなり、相続人の納税資金が不足するという問題が生じてきます。
これに対処するため、相続人が株式を発行している会社自体に株式を譲渡し、納税資金を確保するということがよく行われます。
ただしこの場合、会社にとっては自己株式の取得という少々特殊な状況となります。すなわち、通常、株式の対価のうち、資本金額(出資額)に対応する分を超える部分は配当金とみなされ、総合課税(住民税と合わせて最高税率55%)の対象となり、一般に課税上不利となってしまいます。
しかし、相続人が相続財産として取得した株式を発行会社に譲渡する場合には特例が認められており、この「みなし配当」の部分が総合課税されるのではなく、一定の期間内、譲渡所得として20%の定率課税となります。
この一定の期間は上述の取得費加算と同様、相続税申告の申告期限から3年以内の譲渡となります。
この特例を適用するにあたり気を付けていただきたいことは、20%の定率課税が認められる相続人は、相続税を納付している者に限定されていることです。
すなわち、相続税の配偶者軽減を利用して相続税を納付しないこととなった配偶者が相続で取得した株式を発行会社に譲渡してもこの特例は適用されず、みなし配当として総合課税の対象とされてしまいます。
上述のとおり取得費加算も相続税を納付する相続人に限定して認められている制度なので、このような非上場株式を取得する相続人を誰にするのか、適切に判断しておく必要があります。
*なお、本年度の税制改正により、相続財産についてもマイホーム特例(3,000万円の所得控除)が適用できることとなりました。詳しくは 相続財産に対するマイホーム特例の適用 - 平成28年度税制改正 をご参照ください。
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